2001年2月お薦め書籍

家族依存症
仕事中毒から過食まで
book
発行日
1989年8月15日
著者
斎藤 学
(さいとう さとる)
発行所
株式会社 誠心書房
定価
1,500円+税
(2001年2月1日現在)
【書 評】

 学者の書いたものとしては、『共依存』のことを、これほどに平易に、書いてある本は他にはないであろう。学者の書いた本というものは、内容的には見るべきものが多く、確かな場合がしばしばであるが、兎角に表現が難しい事がよく見受けられる。

 しかし、この本に限っては、この事は当て嵌まらない。内容が確かであると同時に、分かり易く、挿絵も適宜入っている。従って、楽しく読めて、しかも解り易い。本来が、分けて掲載されていたものを纏めたものであるだけに、途中何処から読んでも分かるし、尚且つ楽しめる事を保証する。

 各種の『依存症』例えば、『アルコール依存症』や『仕事依存症』、更には『食事依存症』など多くの依存症者を支えている人達(イネイブラー)の存在が、専門化によって指摘されている。

 イネイブラーと云うのは、主にアルコール依存症者を主とした、各種の依存症者を支えている人を指して言う言葉だが、その状態は、専門家の間では、共依存(きょういぞん)と言われている。

 つまり、共依存症者は、依存症者と嗜癖的な人間関係を結ぶ事で、各種の依存症者を生み出していると言える。このあたりの関係は、少々ややこしいが、各章を楽しく読み進むうちに、これらの関係や、現代の社会病理性などが、くっきりと見えてくる不思議な本でもある。

 嗜癖とは、『耽溺して、自らを害する事』である。つまり、『他人に必要とされていないと、不安になる人と、その人を必要とすることで、その人をコントロールしようとする人との間の、依存、被依存の関係』が共依存と云われる状態でもある。

 ここで筆者が言いたい事は、『嗜癖』や『共依存』と云える状態や、それらを支えているイネイブラーの存在は、特殊な事であったり、極めて珍しい事であったりするのではなく、極々きわめて日常的に見られることでもある、と云うことだ。

 しかし、その結果として言える事は、昨今に取り分け目立って多くなった、『虐待、被虐待』等は、このところで表面化が目立ってきているが、元来、社会の中には昔から深く潜んでいたものでもある。この本は、これらの事柄が、原点となる家族を中心に、実例を引用しながら、平易に興味深く、述べられている。

 とりわけ最近、特に問題になっている「児童虐待」のことは勿論の事、第一章「母と子」の中で取り上げられている。第二章「父と母と子」の中では、最近、見失われつつある「父親の機能と世代間境界」について述べられている。その他、第三章「社会化と問題行動」では、登校拒否や過食、拒食症の病理についても述べられている。

 第四章では、「結婚」の中で、「結婚してみてわかること」や、先程述べたイネイブラーの典型でもある「アル中妻症候群」について、又、「虐待・被虐待関係」に就いても、実にわかり易く述べられている。最終章では、「共依存症からの回復」と題して、「共依存症の円環からはずれるには」のところで、そのステップを述べている。

 現代人の場合、この本を読んで、自分には全く関係がない、と言える人が何人いるであろうか。他人の目から見て、明らかに「嗜癖」であると云う以外に、仕事がいつも忙しく、風邪をひかなければ、とても休めない方や、殆ど毎日、晩酌を欠かさない人、体重がオーバーであることは百も承知なのに、どうしてもお腹一杯に食事をしなくてはいられない人などには、特に、お薦めする次第である。

(文責:飛鳥井 雅之

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