2002年3月お薦め書籍

原初からの叫び
抑圧された心のための原初理論
book
発行日
1975年12月1日
著者
アーサー・ヤノフ
訳者
中山 善之
(なかやま よしゆき)
発行所
株式会社 講談社
定価
1,200円
(1975年12月1日現在)

関係作品の御紹介
月とブランコ
(「結婚ってなんなの!? 第1巻 生まれる編」に収録)
book
著者が、『原初からの叫び』を読んで衝撃を受け、自分の体験、自分の原初からの叫びを表現したもの。
発行日
1996年1月25日
著者
森生 文乃
(もりお あやの)
発行所
株式会社 学陽書房
定価
505円
(2002年4月24日現在)
【書 評】

 今月のお薦め本も亦、古い時期の出版の本になってしまった。しかし、この度にお薦めをする本は只の本ではない。初版が1975年12月1日であるから、1月にお薦めをした本よりも、更に以前で、なんと26年も前の本と云う事になる。

 ただ、ウィスキーではないが、古いものだから良いと云う訳ではなく、この様に古い本で、しかも今は確実に絶版に成っているにも拘わらず、どうしてもお薦めをしたいと云うのには大きな理由がある。

 実は、最近の事であるが、絶版に成っている本でも、希望者が100人を超えると復刊をしてくれるというサイトが有ると云う事は、案外、知っている方が多いのではないだろうか。と云う事で、最後のサイトに出掛けられて、是非ご協力を戴きたいというのも今回、採り上げた大きな理由の一つでもある。

 この本は、筆者が今までに個人的にクライエントの方にお薦めをしただけでも100冊を遥かに超えているが、仮に復刊が出来たとすると直ちにお薦めをしたい方々が、今現在の時点でも100人は越えている。

 内容を書かない前から一体何を言い出すのかと訝る方も居られるとは思うが、それ程の本である。

 さて、内容を少しご紹介をしてみると、目次の所には  「神経症とは何か」
  「苦痛」
  「苦痛と記憶」
に始まり、我々が知りたい事の殆どが並んでいる。
  「緊張の本質」
  「防衛機制」
  「感情の本質」
  「治療」
  「呼吸・声・叫び」
  「神経症と心身相関の病気」
  「正常ということ」
  「原初療法後の患者」
  「眠り・夢・象徴」
  「愛の本質」
  「性欲・同性愛・両性性」
  「恐れと怒りの原因」
  「薬物と常用者」
  等など…
どの一つを採りあげても、一冊の本のタイトルに成り得うる物が並んでいる。

 こう云った事を長年に亘って捜し求め続けて来た方が居られたら、恐らくは息もつかずに一気に読み進むであろう事は、想像に難くはない。

 特に、本文の中で痛快なのは、かの天才と云われたフロイトの信じられないような間違っている概念の2つを的確に指摘をしている処である。この事は、フロイトといえども人の子である感をいだいた処でもある。それは、「神経症には始まりはない」とする考え方であるが、この本の中では、「神経症の始まりについて」実に詳しく理路整然と書かれている。

 更にもう一つは、「もっとも強力な防衛機制の備わっている人間が、社会でもっともよく機能できる」と云うものだが、これ等は、心身医学では失笑物の理論だが、この本の中でも、このフロイトの“古きよき概念”は、ものの見事に打ち破られている。

 さらに驚くべき事は、心理的な働きと癌の発症との関係を否定するほどに、現代の時点でも日本の一般内科では、世界から立ち遅れているが、この本の中では、この時点で多くの諸説を引用をして、癌と心理的な関係に関して言及をしている。この事は、ほぼ同じ頃にドイツのバルトラッシュ博士が、癌と心理的な関係の説を唱えただけで、精神病院に収容をされたと云うのと、期を同じくしているから、途轍もなく凄い事である。

 例えば、『ジェファーソン医科大学の精神病医、クラウス・バーンスンは、「もっともガンにかかりやすいのは……自分の感情を否定する人たちである」と報告をした。』(147頁)と引用している。或いは又、『彼の所見からすると、個人的な悲劇を経験した場合にガンにかかりやすい人は、感情的な反応を神経組織を介して内部へ送りこむ傾向がある』(147頁)という事も引用している。そして、前述のドイツのバルトラッシュ博士の言っている事と同じ『ガンの患者は概して「両親と、貧しく不満足で機械的な関係」にある』と云う事も引用をしている。

 これらの諸説に関しては、実際のガンの経験者としての筆者としては、全く否定の仕様がない事実でもあるから、この本に書かれている事の信憑性は、更に確実なものと成らざるを得ない。

 そして、これは案外世の中に知られていない事として、この本の著者のアーサー・ヤノフは、かのビートルズの中心メンバーでも有ったジョンレノンの治療をしている。ジョンレノンは、ビートルズが活動を停止してから間もなく、この本の著者であるアーサー・ヤノフに治療を受けているが、ジョンレノンにとっては治療が一段落をして、再び活動を再開しようとしていた矢先の凶弾による不慮の死であった。

 最後に素晴らしいのは、この本の訳者である。

 一昔前に一世を風靡した『かいまみた死後の世界』などを始め、数多くの翻訳本を出している方で、この方の翻訳と云うのは、殆ど翻訳本を読んでいると云う感覚が無く、読み進む事が出来るのが大きな特徴でもある。

 医学領域の翻訳本と云うのは、何故なのかは分からないが、実に読み難いものが多いが、この本に限っては、そう云うことは全くない事を保証する。

 最後に成ったが筆者の手元には、既にこの本は無く困っていたところ、快くこのサイトの管理者である岩田 志緒里さんから本を拝見させて戴く機会に恵まれた。お蔭で、この文を草する事が出来ている。心からのお礼を申し上げる。

 そして、この一文をお読み下さった方への筆者からのお願いなのだが、お手数な事ではあるが、以下のサイトに出向かれて、復刊希望の登録をして戴きたいと願う訳なのである。今の時代と云うのは、如何にも外側だけの薄っぺらな、いい加減な物が溢れかえっている時代であるとは云え、このサイトを訪れて下さる程の、心有るお方はまだまだ居られるであろうという希望を託してのお願いである。

【復刊ドットコム】
 『原初からの叫び』への復刊リクエスト投票
 http://www.fukkan.com/vote.php3?no=7014

 と同時に、この様な素晴らしい本がこのまま本当に絶版のままで有れば、本当に“末法の世の中”だと思わざるを得ないと云う、少しの嘆きと脅しをもって擱筆とする。

(文責:飛鳥井 雅之

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