2002年7月お薦め書籍

ブラックメール
他人に心をあやつられない方法
book
発行日
1998年5月20日
著者
スーザン・フォワード
訳者
亀井 よし子
(かめい よしこ)
発行所
日本放送出版協会
定価
1,800円+税
(2002年7月1日現在)

【書 評】

 この本は、先々月にご紹介をした「毒になる親」の著者のスーザン・フォワードの書いたものである。殆ど二ヶ月に近い状態で、続けて同じ著者の本をご紹介すると云う事は、今までには無かった事と思う。この事実は、この本が如何に「自己回復」にとって重要であるかを物語っていると云っても言い過ぎではない。

 この本をお勧めをするにあたっては、筆者としては、躊躇をした要素が一つだけあった。それは、比較的、最近に発行された本であるにも拘らず、新本としては入手が不可能である事と、古書として探しても、先ず殆ど入手に関しては、期待が出来ない。と云う事であった。しかし、にも拘らず敢えてお勧めをすると云う事は、これらの条件を差し引いても尚、この本の意味や価値というものは、「自己回復」と云う切り口からは、非常に素晴らしいものがあり、どうしてもお勧めをしておこうと思った次第である。

 特に、前回の「毒になる親」と合わせて読まれる事で、「こじれる人間関係」に於ける実態が丸見えになり、永年に亘って悩んでいた事が、“こんなに馬鹿馬鹿しい事だったのか”と云う程に理解が出来得る可能性を充分に秘めている本でもある。

 先々月にお勧めをした「毒になる親」も、前半は“その傾向について”、そして、後半は“その対策について”と云う風に書かれていたが、この本も、やはり同じ様な構成となっている。書けば実に簡単な事の様だが、この事は、この本の著者が、よく世に居る、単なる心理学の本を“書くだけの先生”ではなく、シッカリと永年に亘って心理臨床の場を潜って来ている方である事の証でも有ろうかと思う。

 世に多い、心理関係の本というのは、筆者の偏見的な印象を言わせて戴くと、90%以上が単なる理屈だけのものが殆どである。つまり、言っている理屈のツジツマは、ソコソコ合ってはいるのだが、ではさて、実際にどの様に対策を立てて、対応をして行くのかという点になると、其の殆どの物が、机上の空論であって、実際の「自己回復」に関しては、全くお手上げ状態である。

 むしろ、ハッキリと言ってしまえば、心理関係の本を読み、ある程度の情報を得る事で、今までの気付いて居なかったり知らなかった物の蓋が開き、何らかの対策をとる必要性がある状態にまで成りながらも、その後はカウンセリングにでも出向いてカウンセラーにでもかかってくれとでも言わんばかりのものが驚くかな、その殆どである。その点、この著者の本は、前回の「毒親」の本も含めて、対策がしっかりとしていて、実に信頼が出来る。

 この本の表題に成っている「ブラックメール」と云うのは、一言で言えば「脅迫状」と云う意味として使われているが、この様な概念の人間関係の切り口の心理の分野としては、筆者の知る限りに於いては、交流分析(TA)の「ゲーム分析」と云う分野がある。その中にある「ラケット感情=ニセの感情」と云う概念に非常に近い。

 特に、「交流分析」の「ゲーム分析」を学ばれた方々にとっては、この本の中で言っている「脅迫状」と云う概念をも併せて理解をされる事によって、より一層、自らの「意味の無い罪悪感」に関しての理解が深まるものと思われる。

 今ここで、筆者が書いた「意味の無い罪悪感」とは、「意味のある罪悪感」に対して言っているもので、イワユル「罪悪感」には2種類が有り、「意味の有る罪悪感」に対して、相手に脅迫をされた結果として生じてきたものを筆者は永年に亘って「意味の無い罪悪感」と言っているものの事である。

 著者のスーザン・フォワードは、筆者の言っている「意味の無い罪悪感」のことを「無実の罪悪感」と言っていて、この表現は、素晴らしいと思う。同じ内容の事を異なる言葉で表現をしてはいるが、筆者の永年に亘って言って来た事と内容的に同じ事を言っていた方が、海の向こうに実は居たと云う事は、筆者としては、近来に無く痛快至極である。

 と云うのは、筆者が永年に亘り言っている、この「意味の無い罪悪感」と云うことを話しても、イワユル心理の偉い先生方で理解を示した方々は、殆ど皆無であったからである。20年程前に、ただ一人「国分康孝先生」のみに首肯して戴いた記憶があるのみである。

 つまり、一言で言えば「相手に対して無実の罪悪感」を感じさせるような内容を持ったメッセージを、即ち「ブラックメール」と言っているが、生まれてから数限りない夥しい数の「ブラックメール」を貰いながら、しかも、その相手が自身の親で有ったりした事に気付くと云う事で、今までの「全く意味の無い罪悪感」は解除され、それが「無実の罪悪感」で有った事に深く気付くはずである。

 そして、この著者の素晴らしい所は、アメリカの心理関係者の方々に最近特に多く見受けられる「仏教」等からの中途半端な引用が無い事でもある。と云うのは、本来は「仏教」と云うものは、決して「本」などで学べるものではなく、「師匠」につき、人から人へと伝えるものであるにも拘らず、兎角、アメリカの心理関係者と云うのは、しばしば単に「本」から学んだ「仏教」を引き合いに出す傾向がある。

 しかし、その多くは、「本」で学んだと云うだけで、「基本」と「中心」を外している事が多いものである。

 その点、この本の著者は、「仏教」の「ぶ」の字も述べては居ないのだが、自然に書かれている中には、仏教の基本的な最も重要な要素が含まれている。

 例えばどういう処かというと、「仏教」の最も基本となる所は「縁起」つまり「因縁」と云うことだが、その事がそう云う言葉を使わずに、確かに書かれている。具体的には、「ブラックメール」を発信する人だけの事では無く、それを発信し易くしている人の事も、合わせて書かれている。世の心理の本は、このどちらかの事に偏って書かれた物が実に多いのだが、「因」の方と「縁」の方の両方の事が仔細に書かれている。

 兎角に最近のアメリカの心理関係の方々の傾向として、「仏教」や「道教」などを本で読んだだけで、その考え方を概念として取り入れて「売り」としている方が多いが、その実、内容を詳細に検討をすると「机上の理論」としての物が殆どでもあり、筆者としては常日頃からニガニガしく思っていた事であった。

 その点、この著者の姿勢は、臨床からの結果に基づくものが中心に成っていると云う印象を強く受ける。最初に書いた様に、この本をお勧めをする上での唯一の障害は、入手が困難であると云う点だが、これを簡単に解決する方法としては「原書」であれば、入手は簡単な様である。

 と云う事で、英語に多少とも自信のある方は、そちらの方からの入手をお勧めする次第である。著者のスーザン・フォワードのサイトには、その著書の数々が写真入りで掲げられているが、そこからの入手は容易であると思われる。今回このサイトの管理者の方にお願いをしてスーザン・フォワードのサイトにリンクをして頂くので、そこから行かれればよいと思う。

 本当に素晴らしい本というのは、なぜにこの様に入手が難しいのであろうか!世の中には、なぜに内容的に質の悪いものがこうも多いのであろうか。筆者としては不思議であると同時に、嘆かわしい事だと思っている。

 この素晴らしい「本」を「自己回復」を目指して「道を求めておられる」全ての方々と、特に永年に亘って『鬱』の状態を抱えて居られる方々に強く強くお勧めをして擱筆とする。

【復刊ドットコム】
 『ブラックメール』への復刊リクエスト投票
 http://www.fukkan.com/vote.php3?no=11163

(文責:飛鳥井 雅之

▲トップ


(C) Copyright Somatopsychic Natural Development Center (SONDC).
2001-2002 All Rights Reserved.


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送